作品紹介「海賊王冠」

ライターの「今俊郎」様による作品紹介記事です。
今回はソフトハウスキャラの3作目「海賊王冠」です。
こちらは「全力支援プラン」のプレゼント作品にもなります。
くわしくは「全力支援プラン」の記事をご確認ください。


21世紀が幕を開けた2001年。美少女ゲーム業界は、様々な名作を世に送り出していた。『鬼作』『Piaキャロットへようこそ!!3』『大悪司』『君が望む永遠』などなど。まさにきら星のごとき名作たちが、この年に発売されたのだ。
そんな2001年4月20日にソフトハウスキャラが発売したのが『海賊王冠』。ブランド3作目として発売された本作は、カードをメインに据え、商船襲っていく、まさにタイトル通りに海賊をテーマにしたカードSLGであった。
実はこの頃、美少女ゲーム業界には「3作目が大事」という言葉があった。そろそろブランドの知名度もついてきて認知度も上がっている時期が、だいたい3作目の発売時期。その3作目できっちりとファンに受け入れられれば、そのブランドは長く続いていく……というものだ。
ソフトハウスキャラは2019年でデビュー19年。なるほど、そういうタイトルだったのだなあ、と改めて考えてしまう。


舞台は、ふたつの軍事大国ダルモアとルシアン、海洋生物ラスキーノ、そして海賊達が覇を競う大海。海賊船長である主人公は、女の子の部下に囲まれながら、周囲の船を襲い、快楽的な生活を続けていた。そんな活動に目を付けた軍事大国ダルモアとルシアンは、それぞれ海賊の撲滅、または海賊を海軍に取り入れようと動き始めた。同じ時、ラスキーノの姫が人類の壊滅を狙い、船舶の無差別攻撃を始めた。主人公はその動きを利用し、他の海賊と結託しながら、多額の財宝と幾多の女性を奪おうと動き始めるのだった……という物語だ。


ゲームはアドベンチャー・パートとSLGパートを繰り返して進んでいく。
SLGパートでは、海域を移動して商船を捜索し、見つけた商船相手に交渉したり戦闘を仕掛けたりするわけだが、タイトルが『海賊王冠』なわけだから、基本的には襲いかかって海賊行為を繰り返すことになる。この時、狙うべき商船が動いているというのが、発売当初に話題になったのを覚えている長いファンもいるだろう。こういう細かいところに遊び心を仕込んでくるソフトハウスキャラらしさというのは、ブランドスタートからの伝統ともいえるものだ。
こうして手に入れた財宝を売り払って、さらに海賊船を強くして、新たな獲物を探して海に出る。わかりやすく言えばそういうゲームだが、カードプレイが基本になるということで、その組み合わせ次第で戦闘が有利になったり不利になったりする。戦闘でもさらに様々な戦闘方法のカードを投入することで有利に進めることになるのだが、これにも相性のようなものがあるため、戦術的な読みなども重要になってくる。

基本ルールは簡単なのだが奥が深い──まさに「ハマってしまうゲームの典型」みたいな『海賊王冠』。しかも戦闘時のカードの組み合わせは、当時の人気攻略サイトをもってしても解析しきれなかったという。特殊な組み合わせなどもあり、繰り返しプレイ作品ではないのだが、「やりこまないと、気が済まない」という人にはある意味うってつけのゲームなのだ。
当初は行ける海域も少ないが、海賊行為を繰り返すことで行動範囲も広がっていくところなどは、まさに「海賊の成り上がり伝説」を楽しんでいるような気持ちになれる。
アイテムカードの種類も豊富で、これらを全部集めるのはかなり難しいというのも、実に遊べるゲームといった感じで心を騒がせてくれる。


もちろんおまけ要素が充実しているのも、この時期のソフトハウスキャラらしさ。クイズやヒントコーナー、ストッロゲーム、開発者の一言などが用意されている。そしてこれはおまけコーナーとは違うのだが、ゲームに実装されている「つり」。これはいまだに攻略方法がわからないばかりか、どういう効果があるかも不明。一応、時間をかけて粘れば見返りがあるとのことだが、当時頑張った人はどれくらいいるのだろう。つりに興じていると戦闘が起こったりもするらしいあたり、なんとも不思議なモードである。


そして、海賊もののお約束として、ターゲットにした船には女の子が乗っていることもある。かわいい女の子が乗った船が海賊に襲われたらどうなるか。考えるまでもないね。
もちろん物語に大きくかかわってくるヒロインたちも充実。主人公の参謀役で、悪事にだけ頭の働くロゼルゥに、兄探しに出てすぐに主人公に捕まりヤられてしまう雪崩は、共に主人公アイスの海賊団「ブラック・ベルベット」の構成員。さらに軍事大国の深窓の姫・桃花、軍事大国に敵対する国の最小の娘・クルーネ、ライバル海賊のキルン、海に暮らす人魚族の王女・琥鬼、そして海に浮かぶ交通の要衝のホワイトオーク島の市長であるロレーヌ。舞台が広いだけに、なかなかにバラエティー豊かなラインナップとなっている。

(左から、ロゼルゥ、雪崩、トト、ココ、モモ、桃花、クルーネ、キルン、琥鬼、ロレーヌ)

そんな魅力的なヒロインたちを描いている原画家は、メインにSHIGATAKE、サブに人丸と佐々木珠流という布陣。メインのSHIGATAKEは、ソフトハウスキャラ作品の原画家として唯一の仕事が、この『海賊王冠』。さらに人丸は、その後、ザウスで『永遠のアセリア』や『聖なるかな』の原画を手掛けることになる。

そんな『海賊王冠』だが、実は本作にもボイスは入っていない。というか、この作品までソフトハウスキャラはボイスを実装していないのだ。この年の秋に発売された『真昼に踊る犯罪者』からはボイス実装ということで、その意味でも、ソフトハウスキャラのひとつの区切りとなる作品だったのではないだろうか。
多種多様なカードを駆使して、大海原を駆け巡っての海賊行為。ボードゲームの楽しさをPCゲームならではの手軽さで処理し、遊びやすい1本として提供してくれる。前作『うえはぁす ~お姫様は今日も危険でした~』からも伝わってきたソフトハウスキャラのゲーム作りの魅力は。多種多様の美少女ゲームが許されていたこの時期だからこそなしえたことかもしれない。とはいえ、この時期のソフトが好きというファンも少なくない。機会があれば、ぜひプレイしてほしいゲームだ。


これからもこのような感じで次々作品紹介をして行きたいと思います。
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