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声優の記事(1)

【音リテラシー】「良いサウンド体験」ってなぁに?

落語でいうマクラ

僕は飲食店でのアルバイトの経験がありまして、まあわかってくれる方も多いと思うんですが、普段からお客さんに「ありがとうございました〜」とか言っていると、自分がお客さんの立場で外食しているときでもスタッフさんが「ありがとうございました〜」と言っているのにつられて「ありがとうございました〜」って言ってしまいそうになったり、ひどいときはバイト中お客さんの帰る後ろ姿に向かって「ごちそうさまでした〜」なんて言いかけてしまったり、するわけですね。よほどの美人が通ったのでしょうか。

「ありがとうございました〜」ひとつをとっても

店員さんが忙しいときなどは、「ごちそうさまでした〜」と会釈して店を出ようにも「ありがとうございました〜」と返してもらえず、なんとなく間が悪い感じになってしまうこともありましょう。くらびすたは小心者ですからこういうときは、態度が悪いだの何だのと思うことはおろか、「僕が帰ったことがわからないと、後でテーブル拭くのに支障が出ないかな」などと考えてしまう始末です。

「ありがとうございました〜」という挨拶がもらえたのはいいけど、実は一旦トイレに立っただけで、本当は戻ってきた後にお茶のおかわりでも飲むつもりだった…ということもよくあることかと思います。遅いのはもちろん、挨拶は早すぎてもエレガントでないのです。

○亀製麺やラーメン○郎での退店時の流れを順番に並べるとこうなるでしょう:

(1) 席を立つ
(2) 出口に向かう
(3) 戸を開ける
(4) 外へ出る
(5) 振り向く
(6) 戸を閉める

これらのタイミングについて「ありがとうございました〜」を言ってもらい「ごちそうさまでした」と返すことを想定してみます。人によって感覚は違いましょうが、とりあえずくらびすたの場合は…

(1) ちょっと早すぎない?
(2) トイレ行くだけの人に声かけたら気まずくなりそう
(3) 店員さんに対して真後ろを向くように戸が付いている場合、「ごちそうさまでした」のため振り向く必要がある / 真横に戸が付いている場合はそのまま真横を向いて「ごちそうさまでした」を言えばいいのでスムーズ
(4) 足を止めるなり向き直るなりする必要があるので若干ぎこちない
(5) !!!このタイミングが一番いい!!!だいたいこのタイミングでこちらを向いてもらえると目が合うので嬉しい
(6) 遅いわw

という所感に至ります。

こういった印象はセリフの長さでも前後します。丁寧な言い回し「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」は(5)のタイミングだと下手すれば聞き終わるまでに戸を閉めてしまいそうですが、(3)のタイミングだとセリフの終わり際に合わせて「ごちそうさまでした」を言うことができれば収まりがいいですね。

まあお客さんの身分でこれを強いるわけにはいきませんが、自分がこれを提供する側に回るとなれば、つまりそれはより清々しい気持ちでお客さんに帰ってもらうための「セリフの長さとタイミングの調整」、まさにサウンドデザインなのです。

これはダイマなのですが、ラーメン荘「歴史を刻め」六甲道店のトニさんはほぼ毎回(5)のタイミングで「おおきに!ありがとうございます〜!」と声をかけてくれるので大好きです。

これが店の外観です。ちょうど(5)のタイミング、戸を閉めようと振り向くタイミングで店主さん(真ん中の帽子をかぶっている人)と目が合うんです。サクッとテンポの良い挨拶と相まって、とても具合がいいんですね。これなどまさにUI/UX面とのシナジーといえましょう。

まとめ

この記事では飲食店での挨拶を例にとって、どういった音をどういったタイミングで鳴らすべきかを検討する流れについて説明しました。そして、(偶然であれ意識的であれ)ユーザーの動線と声の出し方の兼ね合いによって優れた効果を発揮している実例を紹介しました。

人間気に入らないものには敏感でも、心地いいものとその理由についてはなかなか気付きません。サウンド周りなど目には見えないものですからなおのことです。それでも折に触れて、そのスムーズな流れ、「『何事もなかった』という体験」について科学することができれば、サウンドも含めた様々なもののデザインについてより一層深いものを味わい、生み出せるようになれると思います。

この記事がその一助になれば幸いです。

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