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まいてつPSの記事 (330)

whisp 2021/02/26 23:07

新シリーズ 『かさなるASMR』第一弾! 日々姫のご紹介です!!! (進行豹

こんばんわです! 進行豹でございます!

TVアニメ『レヱル・ロマネスク』派生であるバイノーラル/ASMRボイスコンテンツ
『蓄音レヱル』シリーズがひとまずの完結を迎え。

ボイスの方も新シリーズを、ということとなり、以下のオーダーをいただきました。
(お打ち合わせの議事録は存在しないので、うろ覚えですが、確かこの辺だったか、と)

■ 「『まいてつ』シリーズのプレイヤーさんにだけむけるのではなく、はじめましてのASMRリスナーさんにもすっと(背景知識に必要なく)聞けるASMRコンテンツを」

■ 「同時に、『まいてつ』シリーズのプレイヤーさんにもご満足いただけるボイスドラマを」

■ 「ので、そのふたつを(レコードでいうなら)A面B面的に構成して一本となるシリーズに」

と。

で、わたくし、A SIDE=ASMR SIDE。B SIDE=Binaural SIDEと銘打つことをすぐさま思いつき、下記の概要にて企画草案をお戻ししました。

■ A=ASMR SIDEはASMRを純粋にお楽しみいただけるよう、ASMRの音を主とし、キャラクタードラマ要素はできる限り押し出さないようにする

■ B=バイノーラルサイドは、バイノーラルマイクの特性。即ち「左右、奥行き等の音の臨場感」を活かしつつ、キャラクターボイスドラマとして構成する

■ 『蓄音レヱル』シリーズでご好評いただいた「現地フィールドレコーディング」要素はBサイドで

■ Aサイドからお聴きいただいても、Bサイドからお聴きいただいても問題ないように構成。理想をいえば「Aを聴いてBを聴くと、もう一回Aを聴きたくなる」ように。

で、概ねこんな内容で新シリーズ開始していって、うまくいかない部分あれば都度都度調整しよう――ということでまとまり。


イラスト :curaさん
編集・音響:新井健史(あらけん)さん
シナリオわたくし進行豹 

でお送りすることになりました新シリーズが、こちら! 
『かさなるASMR』となっております!!!

その第一弾は日々姫! 

CVは朋永真季さんでございます!!!

https://www.dlsite.com/home/announce/=/product_id/RJ319051/

上記ページのブラウザ試聴からほぼ全トラックご試聴いただけますので、日々姫との癒やしのひととき、まずはご試聴からお楽しみいただけますと幸いです!!!

Bパート拝見環境音は、SL列車の客車環境音や、寝台客車ホテルの空調音などの現地録音のものとなってますので、
おこころあたりある方々には「ああ、あそこの音ね」と、さらにお楽しみいただけるのではないかとも思っております!

で!

今回の作品からは、機材まわりも大幅アップデートされた! とのことなので、そちらもあわせご紹介いたします!

マイクはKU100で変わらずなのですが、周辺機材が、添付の図ものとなりましたのです!!!

実際の録れ音も上記からご試聴いただけますので、ぜひぜひそのお耳でお確かめいただけますと幸いです!!!


ストーリー的なところは
「『女性客を鉄道に誘引することが鉄道復権のためにとても大事』ということで企画立案された『エステ列車』をデザインするため、日々姫がエステ体験にチャレンジ!」
というものとなっております。

その辺はBパートでじっくり描かれますが、なーんも知らんと日々姫にドロ風呂エステしてもらうだけでもこころもお耳もリラックスしていただけるかと思いますので、ともかくぜひぜひお楽しみいただければ! という感じです!!


でもってご試聴いただき「よさそう」と思っていただけましたら、ページ右上の方にある

「☆ お気に入りに追加」ってとこから、お気に入り登録していただけましたら嬉しいです!


&今後、より掘り下げた作品内容や聴きどころについても、順次ご紹介していければと思っております!!!

よろしくお願いいたします!!!!

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whisp 2021/02/21 22:31

レイルロオド・トレインon銚子電鉄 アルジェによる車内放送台本 無償公開(進行豹

こんばんわです!!!!

以前、すずしろによる「SLすずしろ車内放送全台本」を公開したのですけれど
https://ci-en.dlsite.com/creator/922/article/412237


「そういえばアルジェの“レイルロオドトレインon銚子電鉄”のときの車内放送台本は公開してないっけ」と思い出しましたので、
そちらもどどん! と、公開させていただきます!

無料会員登録だけでどなたにもお楽しみいただけますので、もしよろしければぜひぜひです!


で、尾崎真実さんがご収録――のみならず、イベント時には『ライブでの車内放送』という荒業を鮮やかにこなしてくださいました、この車内放送。

https://maitetsucs.com/rtreport

音源データの方、記念きっぷセットなどに同梱されてたのですが、いまはもう中古でしか入手機会ないかなぁ、と思ってます。

もし「きいてみたい!!!」というお声があるようでしたら

『蓄音レヱル アルジェ』
https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ298302.html

に同梱いただけないかお伺いしてみるくらいはわたくしにもできますので、
もしご要望ございましたら、コメントなりリプライなりDMなりでいただけますと幸いです!!

というわけで、以下、台本ご紹介です!!!

フォロワー以上限定無料

レイルロオド・トレインon銚子電鉄 アルジェによる車内放送台本

無料

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whisp 2021/02/07 23:35

2021ニイロク誕記念ショートストーリー『Happy Birthday Dear ニイロク』(進行豹

2021年ニイロク誕生日記念ショートストーリー 『Happy Birthday Dear ニイロク』(進行豹

///////////////////

このお話は「まいてつ」共通ルート開始前の、無数に存在した過去のうちのひとつ。
右田双鉄の物語が物語られる以前の御一夜での、赤井宮司とニイロクの、2/6のお話です。

///////////////////

「検査の結果は今回も同じ。『異常なし』ばい」

「そうですか……」

登呂元技官の診断ならば、疑う余地などありません。
けれど、こう──こうも毎年、同じことばかり繰り返すのは……

「ただ、まぁ……こん一年。あんたのことを見させてもろーて」

「私──ですか? ニイロクではなく」

「新しか仮説ばひとつ。思いつくことは思いついたと。
まぁ、専門分野の外になるけん、素人の思いつきにすぎんけれども」

「ぜひ、お伺いさせてください」

新しい仮説。
それがもし有意と思えるものならば、ニイロクへのいいプレゼントになります。

「ニイロクのロールアウト日に、そのようなお話に触れさせていただけたことも、なにかの導きかと感じます」

「導きねぇ……だとしたら、あんたの信じる神さんも、随分厳しか性格よ」

「ああ──」

耳あたりのよくない話と──これは警告なのでしょう。
ですが、そうであるならなおのこと──

「聞かせてください。それがどんなに厳しいお話だとしても、ニイロクの回復につながるならば」

「そんニイロクの回復を──」

じっと、登呂技官が私を見ます。
……目を逸したくなるほどの、強い圧力を感じます。

「──赤井さん。他ならぬあんたが、望んどらんのじゃないか……ゆー、仮説ばい」

「……なるほど。それは──」

ありえません、と言いたい気持ちが沸き起こります、
自分でも驚くほどの激しさで。

(ならば、これは──)

もしかしたなら、図星、なのかもしれません。
だから焦らず、丁寧に言葉を選びます。

「……無意識のうちに、的なお話でしょうか?
私は、私の自覚としては、ニイロクの回復を真摯に望んでいるのですが」

「そん自覚が、どぎゃん行動につながっとるかね」

「っ!」

指摘にすぐさま、叫び出したいほどの強い否定を感じます。
でしたらやはり──いえ、答えを焦ってはいけません。

「定期的に、ご検診を、いただいています」

「『異常なし』いう見立てが出ていて。同じ検診をなお受診する。
そん他に、具体的に、ニイロクの回復のためにしていることは? なんね?」

「その他には……いえ──しかし」

……ああ、そうなのかと。理性が、理解をはじめます。

防衛反応なのでしょう。
口はべらべら、弁解をまくし立てますが。

「何もできていないのは、ニイロクさんをさらに傷つけることを恐れるからです。
私の若さと愚かさが、ニイロクさんを追い込んで、取り返しのつかない傷を負わせてしまったがゆえ」

「そうであるがゆえ、権力闘争から、鉄道から、ニイロクを遠ざけ。
自分ひとりの宝箱の中にしまいこむことに成功した」

「っ!!?」

「ニイロクが機能回復したら。それが公になったなら。
──どぎゃんこつになるか。赤井さん。あんたはそれを、恐れとるんと違うかね」

「…………」

声が、出ません。
ツバが湧き出て、無理に飲み込み──飲み込んだのに、喉の乾きを感じます。

「ニイロクは、ありゃあ優秀なレイルロオドよ」

そのことならばわかっています。
私が、一番、誰よりも。

「そん優秀なレイルロオドが、外界の全てを遮断して、マスターだけをじっと見ている。
じいっと見てりゃあ、わかろーもんよ。あんたが本当は、何を一番望んどるのか」

お腹に力をぐいっといれて、息を──吐きます。
そこになんとか、意思を混ぜ込み、言葉にします。

「私の、一番の、望みは──」

言葉を出せます。大丈夫。
自らの過ちに気づいたのなら、それを正していくのみです。

「私とニイロクが、不健全な共依存関係にあるのなら。
私の望みがニイロクを、閉じ込めてしまっているのなら」

「『なら』。どぎゃんしよると?」

「それを解消することです。
解消をして、ニイロクに自由を与え、そのうえで有りたい形を選択してもらう」

……ニイロクは、本当に優秀なレイルロオドです。

帝鉄からの遺失物──その所有権を私が時効習得するまでの20年。
じっと隠れて暮らすことを、あるいは変わらず、望んでくれるかもしれません。が──

「ニイロクが私と離れたがるとは思えません。
けれどその上で、ニイロクが再びの鉄路を望むこともまた、ありえるでしょう」

思考が、言葉が乱れていると感じます。
けれども一気に吐き出さなければこの毒は、独占欲は──
もっと巧みに私を騙すと、はっきり自覚できています。

「そうであるなら、わたしはニイロクと同じ望みを抱きましょう。
全ての罪を贖い、その上で、再びニイロクと共に走ることを望みます」

言い切って。なにかが離れたと感じます。
それは恐らく

「随分と自分勝手な望みに聞こえるばってん」

「っ」

登呂技官は、本当の意味でのレイルロオドの──
レイルロオドという存在全体の、味方です。

私への当たりが厳しくなるのは、無論、当然のことでしょう。

「そん望みが、きっかけになるかもしれんねぇ。あんたがまっこと、ニイロクの回復ば望んどるなら」

「望んでいます──っ!!」

「ん? どぎゃんしたと」

「ああ、いえ」

ニイロクは私のレイルロオドです。
極めて優秀で忠実な……言葉にしない私の望みも、汲んで叶えてしまうほどの。

「私の望みを、ニイロクがもしも汲んでしまうのならば。ニイロク自身の望みというのは」

「なんねいい年したおっさんが! 思春期か!!!!」

一喝──いいえ、これは、叱咤です。
大人になって、宮司になってはじめて私は──怒鳴りつけられ、叱られている。

「そぎゃん問いの答えなんぞは」

「ですね。大変失礼いたしました」

ですから、深々頭を下げます。
謝罪ではなく、感謝をこめて。

「その答えこそ、私とニイロクがふたりで見つけ出さねばならない。
──私とニイロクの中にしかないものでした」




「とは言ったものの……」

自分でもほとほと情けないとは思います。
けれどもやはり、惑います。

「ニイロクに、どう切り出せばいいのでしょうか……」

ロールアウト日。記念のケーキを買ってみました。
最新型のニイロクの、好物のひとつであった、ショートケーキを。

「これを果たして、きっかけにできるのかどうか……」

包帯をぐるぐる巻きにし、表情を浮かべなくなった顔を隠して、
外界の全てを遮断している、今のニイロク──

「あの姿が、私の望んだ結果であるのだとしても……」

安全極まる鳥籠から、ニイロク自身が出たがるかどうかは別問題です。
いや、私とて──本当に出したいのかどうなのか……

「っ。いいえ。堂々巡りに逃げるのは今日でおしまいにします。
だからこそ、話し合う必要があるのですから」

ニイロクと、ただ会話する。
決まりきったやりとりではなく、新しい刺激を、言葉をぶつける。

「……ニイロクには、何の異常もないのですから」

私が凍らせてしまったものを、ほんのわずかでも緩めればいい。
五年、十年──その先に、機能を少しでも戻せればいい。

「……五年。十年」

言って、気づいて。背中がヒヤリと寒くなります。
五年、十年。ニイロクはまだ、全く余裕で稼働を続けることでしょう。

(けれども、私は──
そんな近くの未来にさえ、何の保障もないままに……)

マスターを失った、記録上存在するはずの無い廃レイルロオド。
その末路など、想像したくもありません。

「ああ……私は、こんなにも明白な危機からも、目を背けつづけていたのですね」

どろりと黒い自嘲には、寝床の中ででも呑まれましょう。
いまは、とにかく、ニイロクと──うん。

「ニイロク! 今帰りました」

「…………」

言葉も、反応もありません。
けれども気配は感じます。ニイロクは、私をじいっと見ています。

「今日は、ニイロクのロールアウト日ですからね。
何年ぶりになりますかねぇ。ケーキ屋さんに、立ち寄ってみたりしたんですよ」

ケーキの箱を掲げます。
のろり、影が動きます。

「必要無い。ロールアウト日だからといって、何が変化するわけでもない」

いいえ、いままさに、変化が発生しています。
こんなにあっけなく、簡単に──

(ああ、本当に私は──
私のエゴが、これほど長くニイロクを)

自嘲と悔いはすぐ喉元にまでせり上がります。
けれども今は、強引に何度でも飲みくだします。

「そうですか? いや残念です。とてもかわいいケーキなのですが」

この辺は宮司特権です。
急なお願いであったとしても、極めてありがたいことに氏子さんは必ず答えてくれます。

「腕によりをかけていただいて──私のような中年男でも、ときめきを感じる仕上がりです」

すぐには箱を開けません。
ニイロクに本当に、何の異常もないのなら。その本質に、一切変化がないのなら──

「…………」

焦れています。焦れないフリをしています。
みえみえなのに、懸命に──

(ああ)

ニイロクが──ニイロクさんが、そこ居ます。
あのころと少しも変わらずに、ずっと、ずうっと居たのです。

(表情ひとつ、動かなくとも──)

こんな簡単な真実に、どうして私は、気づけないままいたのでしょう。
保身のために、どれほど冷たい仮面を私は、ニイロクさんに押し付けて──

「清春」

「っ!」

……なんて我慢がたりない子でしょう。
最新鋭の試作機で、甘やかされて愛されて……
ああ、だからこそ、これほどまでに愛おしい。

「用事がそれだけなら、自分は」

「いいえ、用事はありますとも。この箱を、ニイロクに開けてほしいのです」

「それは、命令?」

「申し訳ないのですが命令です。私も最近、手先にときおり震えがでるようになってしまって」

「清春の命令なら。自分は、従う」

感情は、言葉の代わりに手先に出ます。
うきうきと、ニイロクの指先は軽やかに器用にリボンを解いて包みを開けて──

「あ」

やはり、感情の乗らぬ声。
包帯の下の表情にも、恐らく変化はないのでしょう。

けれども、はっきり伝わってきます。

「ありがとう。ニイロク」

──ケーキに興味を示してくれて──
後半部分の言葉を飲み込み、代わりの言葉を重ねます。

「では、命令ついでにもう一つ。ケーキを一緒に食べてください。
こういうものは、一人で食べても味気ないですからね」

「うん。清春の命令なら」

いいながらもう、口元の包帯を解いています。
なんとかわいらしいことでしょう。
ニイロクは、ニイロクさんは……本当に、少しも変わっていなかった。

「……? 清春」

「ああ、食べる前に、これを」

ロウソクを点ててごまかします。
歌に自信などありませんが、嗚咽を聞かせるよりマシでしょう。

「Happy Birthday to you
Happy Birthday to you
Happy Birthday Dear ニイロク~
 Happy Birthday to you」

拍手もなし。歓声もなし。
ニイロクは、ロウソクを吹き消そうとも──ああ、いいえ。

「ニイロク、ロウソクを吹き消してください。
それが主賓のマナーです。覚えておいてくださいね」

「吹き消す。覚える。清春の命令だから」

事務的に、淡々と。
ロウソクが吹き消されたケーキから、たっぷりとした二切れを切り出します。

「では、いただきましょう。『いただきます』」

「『いただきます』──あむっ」

「!」

“清春の命令”が無くとも食べてくれます!
でしたら、これは、この動作だけは間違いなく、ニイロク自身の──
っ!!?

「──」

フォークが、皿に置かれます。
手際よく、ニイロクが再び口に包帯を巻いていきます。

「……口に合いませんでしたか?」

「──合うも合わないもわからない。味が全くしなかったから」

「そうでしたか」

「清春。用事がすんだなら」

「ええ、休んでください。手伝ってくれてありがとう」

「お礼は不要。自分は、清春のレイルロオドだから」

のろりと、ニイロクが姿を消します。隠れます。
居心地のいい鳥かごの中に、自らこもってしまいます。

「ですけれど……うん」

泣きたいほどに、甘くて美味しいケーキです。
今日の記念日にふさわしい──ああ。

「ねぇ、ニイロク。ロールアウト日を、これからはこう呼びましょう」

「…………」

返事がないけど、聞いています。
興味をもってくれています。

「お誕生日と。今日からは」

実際、お誕生日ですから。
ニイロクと、私と。ふたりの、再びのこれからの。

「だから、ね。ニイロク」

言葉にしましょう。伝えましょう。
祝福だけを、響きの中に閉じ込めて。

「お誕生日、おめでとう」

;おしまい

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whisp 2021/01/29 23:08

2021みくろお誕生日祝いショートストーリー「みくろの瞳。ハチロクの瞳」 (進行豹

2021年 みくろお誕生日祝いショートストーリー

「みくろの瞳。ハチロクの瞳」 進行豹

///////////////////

「ねぇ見てください、おねえさま!」

これが何度目でございましょう。
みくろのとてもはしゃいだ声が、冬空高く溶けていきます。

「ムフロン、かっこいいですよね! 大きな大きな角があるのが、オスムフロンです」

「かっこういい……」

奇妙な名前で、黒みがかった茶色をしていて、角はまるで悪魔のようです。
わたくしの感覚上は、かっこいいより恐ろしいの方が強いのですが──

「ええ。とても精悍で、野性味に溢れておりますね。とても強そうな動物です」

「強いかどうかは、みくろにはちょっとわからないです。
ムフロン、だって羊さんの仲間ですから」

「羊!?」

回路内、ぽん、ときぐるみを着たれいなのイメエジが沸き起こります。

「って、あの、真っ白でふわふわでめぇめぇとなく、ひつじさんですか?」

「そうなんです、おねえさま。ムフロンが捕まえられて家畜化されて、少しずつ羊さんになっていった──って、そんな学説もあるらしいんです」

「まぁまぁまぁ、そうなのですね」

言われてみると……ああ、左様ですね。横長の瞳が羊とにているような気がします。
けれどもやはり、全体の印象で捉えてしまうと……

「おなじ仲間であるにせよ、随分と違うものなのですね」

「うふふっ、みくろたち、レイルロオドとおんなじなのかもしれませんね」

「わたくしたちと?」

「はい。例えばおんなじ旧帝鉄のレイルロオドだって、
D51 840のランさんみたいにスラっとしてる方もいらっしゃいますし、
すずしろさんみたいに可憐な方もいらっしゃいますから」

「ああ」

例えてもらって、ピンときます。
レイルロオドに全く興味も知識も無いものには、ランさんとすずしろさんの共通点はわからない。

「でしたら教えてください。みくろ。
ムフロンと羊の……例えばどのような点が、同じ種であるという特徴なのですか」

「はい! 喜んで、おねえさま!
あのですね、まずは蹄を見てください」

ムフロンを見て、羊を見て。ヤギを見て。
偶蹄目ウシ科の動物の特徴と、ヒツジ属、ヤギ属の違いを学びます。

「あとはあごヒゲ。あごヒゲがあるのがヤギの仲間で、羊の仲間にはないことが多いです。
しっぽが下向きか、上むきか。角が渦をまいてるか、まいてないか。あごひげがないかあるか。
そこをチェックすれば、羊の仲間かヤギの仲間かは、見分けやすいかなって、みくろは思います」

それにしてもみくろの説明の、なんと流暢で饒舌すぎることでしょう!
噂に聞く“蟲姫”りいこさんときっと、さぞや仲良くなれましょう。

「……たいへん勉強になりました」

いささか過剰にすぎましたけれど、知識を得れば、見える世界がかわります。

「なるほど、羊とムフロンは、そのように見れば瓜二つの生き物たちなのですね」

「なんです! えへへっ、みくろ、おねえさまにムフロンのこと知ってもらえて、嬉しいです!」

ああ、なんという笑顔でしょう。
邪気無く、なんの計算もない──ある面では、れいなよりさらに無垢かもしれない、そんな笑顔。

「みくろは、本当に動物のことが大好きなのですね」

「はい! 動物園で仲良くしてたら、どんどん大好きになっちゃいました」

「単純接触効果というヤツですね。双鉄様に教えていただいたことがございます」

「それって、どんなことですか?」

「繰り返し接していくものを、どんどん好きになっていくこと。そのようにわたくしは教わりました」

「わ! すごいですね。みくろ、単純接触効果? とっても受けやすいんだと思います」

うふふと、はにかみも幸せそうです。

「だって今日、一緒に雄武田に来てもらえて! おねえさまのこと、一秒ごとにどんどんもっと、大好きになっちゃってますから」

「まぁまぁ、なんて光栄なことでしょう」

本当に、なんとあどけないこと。
“好き”という言葉の重みを、みくろはきっと、未だ理解していないのでしょう。

「……とてもしあわせなことですね」

「はい! みくろ、とってもしあわせです!」

弾むように、踊るように、みくろの足が動きます。
かつての住処の園内を、わたくしに案内してくれながら──あら。

「そこ──その空間は、なんでしょう?
かなりのスペエスがぽかりとあいておりますが」

「あ」

みくろの顔から笑みが消えます。
少し、困ったような顔。

「ああ、もしかして……昔みくろがかわいがっていた動物の檻かなにかが」

「いいえ、そうじゃなくってええと──。
ここ、みくろの38696が静態保存されてた場所なんです」

「まぁ」

豊河の──こはるさんの58623から無数の部品提供を受け、動態復元し、御一夜鉄道の一員となった、38696。
あれから何年……随分たったものですけれども。

「移転後ずっと、ここは空き地のままなのですか?」

「はい。あの、えっと──みんなが、いってくれてるんです。
もしも御一夜でも走れなくなっちゃう日が来たら、いつでも帰ってきていいんだぞ、って」

「ああ」

感じます。きっと今が、その時なのだと。

みくろが必死に隠していること。
ですのでわたくしもそれを重んじ、気づかぬフリを続けてきたこと。

「ねぇ、みくろ」

「あの! おねえさま!!!」

「!?」

なぜでしょう。みくろの声は、切羽詰まってしまっています。

「どうしました? いきなりそんな」

「あの、みくろ。おねえさまが伝えてくださりたいこと、わかってるような気がします。
おねえさまがくださるものなら、なんでもみくろは受け取りたいです! けど」

「けど?」

「いまは……いまはまだ、みくろ、準備がたりてないです。
みくろ、だって、これからもっともっと頑張りたいから──
いまもし、みくろがおねえさまに、そういう言葉をかけられちゃったら……」

そういう言葉。
感謝と、謝罪と……それから何を、わたくしはみくろに伝えたいのでしょう。

それがなにかを整理しきれず、さらにみくろが「今はまだ」というのでしたら……伝えることは、押し付けです。

「わかりました、みくろ」

「あ」

「でしたら今は、別の言葉を送らせてください。
とても素直にこころに浮かぶ、ただそれだけの”今”の想いを」

共感をわずかに広げます。
みくろの頬が赤らんで、こくり、頷きがかえります。

「みくろ、あなたは美しい。
乗務に邁進しているときも、動物園にはしゃぎまわっていた今日も」

「はうっ」

「一番最初に出会ったときには、わたくし、戸惑ってしまっておりました。
色の異なる左右の瞳を、見せまい見せまいとするものですから」

「……」

ふっとみくろが懐かしむように笑います。
そうしてまっすぐ──両目でまっすぐ──やわらかにわたくしを見つめます。

「──ええ。本当に美しい。
溢れる喜びだけでなく、マスターを得て自信にも満ちたいまの貴方は。
以前にも増して、とても強く。そして美しくなりました」

「!」

みくろの笑顔が弾けます。
どこまでも無垢で純粋な。

「嬉しいです! ありがとうございます、おねえさま!」

不意に、瞳が熱くなります。
片方だけが、泣き出しそうに、熱くなります。

だから、思い切り笑います。
みくろがそうしているのとまったくおんなじに。

「みくろ。あなたがわたくしの妹であってくれて、とても嬉しい。
あなたは、わたくしの誇りです」

「っ!!!」

「そうして、ね? みくろ」

照れることなく伝えましょう。
だって今日は、一年に一度の日なのですから。

「お誕生日、おめでとう」

わたくしたちは、被造物です。
わかっていても、言葉が魂から溢れます。

「──うまれてきてくれて、ありがとう」


;おしまい

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whisp 2021/01/28 22:42

【受注開始】 「まいてつハチロク七宝焼カーエンブレム」 【2/14まで】 (進行豹

【受注開始】 「まいてつハチロク七宝焼カーエンブレム」 【2/14まで】 (進行豹


こんばんわです! 進行豹でございます!
予告しておりました
https://ci-en.dlsite.com/creator/922/article/423828

「ハチロク七宝焼カーエンブレム」!!

本日より2/14いっぱいまでで、受注を開始いたします!!!


詳細な仕様は以下となります。


//////////////////////////////////

【商品名】
まいてつハチロク七宝焼カーエンブレム

【価格】
12000円(税込)

【サイズ】
縦の一番長いところが80mm

【送料】
520円(レターパックプラスで発送)


【発送予定日】
4月上旬(受注〆後の製造開始)

【エンブレム製造メーカー】
アミタエムシーエフ㈱
https://amitamcf.co.jp/

【発売責任者】
進行豹 (個人)


//////////////////////////////////


【選べるカラー 4色】

不透明の黒
不透明の白
半透明の、暗めの赤(暗朱赤)
半透明の、暗めの緑(濃深緑)


【選べるメッキ 2種類】

金メッキ  (屋外NGの室内向け。耐候性なし)
クロムメッキ(屋外もOK。耐候性あり)


【選べるエンブレム形状】

曲げ加工(エンブレム全体にゆるい曲面が付与される。ボンネット等への貼り付けに好適)
平面  (エンブレム全体がフラットに仕上げられる。平面への貼り付けや背面の加工に好適)



//////////////////////////////////


それぞれのサンプルイメージとしては添付の画像をご確認ください。








(曲げ/平面)




ご制作いただいております金型の動画もご参考までに添付します。





また、出来上がる七宝焼カーエンブレムのイメージについては
https://amitamcf.co.jp/technique/
https://amitamcf.co.jp/works/

も参考になるかと思います。



こちら受注生産でキャンセルのできない商品となりますので、ご発注にあたってはくれぐれも慎重にご検討ください。


わたくしとしては
「自分が本当にほしいグッズを作った(ので自分で買う)」
のにあわせ
「他の欲しがってくださる方がいれば、ぜひぜひ!!」
という感じでございます!


そのほか、なにかご質問等ございましたらお気軽にコメントか
ツイッター @sin_kou_hyou あてにいただけますと幸いです。


受注ページは

https://sin-kou-hyou.booth.pm/

です!


よろしくお願いいたします!!!!!

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