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まいてつの記事 (769)

whisp 2021/08/04 20:03

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whisp 2021/07/31 21:35

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whisp 2021/07/24 22:06

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whisp 2021/07/17 19:37

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whisp 2021/07/01 22:10

2021稀咲お誕生日記念SS「今年のピザはホームメイドで」(進行豹

「ピザを、焼く?」

なんとも不思議そうな声。
ああ、いや──そうか。

「稀咲。ピザというのはピザ窯などの特殊な設備を用意せずとも──
例えば、オーブンレンジなどでも焼くことが可能なそうなのだ」

「いや、双鉄。さすがにそのくらいはボクでも把握しているよ?
ボクが疑問を覚えたのは、だ」

稀咲の指が僕へ向く。
そうして、稀咲自身へ向けられ、くるくると動き、やがて天井に向けられる。

「『誰が?』というその一点なのだけれども」

「無論、僕が焼く。稀咲へのバースデープレゼントのひとつとして」

「双鉄が!?」

うむ?
ハートマークはありえんだろうが、
『双鉄が♪』くらいの反応はあるかと予想していたのだが──

「うーん、双鉄がか。嬉しいよ。すごく。気持ちは。
だけど……その──
専門の職人がいるくらいだし?
ピザを焼くのは、素人にはなかなか難しいんじゃないのかな」

「それはもちろんそうだろう。
ゆえ、協力な助っ人を用意してある」

「助っ人! なんだ、それならそれと早くいってよ。
で、その助っ人さんは」

「こちらだ」

「え? あ──ああ、なるほど。
確かに『用意』だね。買ったの?」

「うむ。凪からな。
ピザ生地を作れるとの売り込みで、実にお安く中古品を譲ってくれた」

「中古品……っていっても、年式、去年のものじゃないか。
と、いうことは──」

ニヤリに苦笑がまじったような、愛情を感じさせる笑み。

「『これで毎日焼き立ってパン食べるばい』からの
『もう飽きたばい!』のコンボあたりなのかな」

「すごいな。ふかみが補足説明してくれたとおりだ」

「ふぅん。まぁお得な買い物ならなによりだけど──
実際、どこまでやれるの? そのホームベーカリー」

「うむ。もう少しで──」

(ピピッ! ピピピッツ!)

「わ!?」

「ちょうど生地ができたところらしい。どれ」

「ぁ──へぇ──ふぅぅぅん。
むっちりもちもち、なかなかよさそうな生地じゃないか」

「いや、まだ生地としては未完成だ。
説明書によると、これを二等分して、軽くガス抜き──
つまりは潰してから丸めて」

「面白そう。ボクやっていい?」

「無論だ。ならば僕は説明書を読む係にまわるとしよう」

……生地を休ませている間にオーブンレンジを予熱する。

休んだ生地を綿棒を使い丸く伸ばして、その上に──

「ピザソースぬって~ チーズ敷き詰めて~ サラミと~ベーコンと~ウィンナーと~」

「肉ばかりではないか。もう少しこう、バランスを」

「あいかわらずお母さんみたいなことをいうねぇ、双鉄は。でもまぁ、あんまり単調になってもだし、ね」

稀咲が冷蔵庫をあけ、中を漁る。

「ああ、しらすはよさそうだね、散りばめて──
あとはピーマンとミニトマトでいいかな」

「ほほう、なかなかに旨そうだ」

「ピザ焼くってあらかじめ聞いてたら大葉も用意したんだけど。
ミニトマトはミニトマトで多分合う」

「すごい自信だな」

「まぁね。食べてる数が違うから」

稀咲とぐだぐだ話していれば、15分などは一瞬だ。

(チンっ!)

「焼けたっ──どれどれ──
おおおお! いい匂い、おいしそう!
それに見た目も──」

「これは……予想を遥かに上回る出来だな」

「生地は──ふふっ! さくっと切れるのにふっくらもちもち。
ハンドトスよりもーちょっとパンピザよりかな。
こういうのもボクは好きだよ」

「ならなによりだ」

「とはいえ、時間、ちょっと使いすぎちゃったかな。
次のミーティングまでに、大急ぎで資料をまとめないとだ」

「ああ」

稀咲が喜んでくれたとはいえ、結果的には仕事を邪魔してしまったか。

「まぁ、ピザだ。
いつもどおりに、仕事がてらにつまんでしまえば」

「もちろん、仕事がてらにつまむつもりなんだけどね、双鉄」

「うむ?」

稀咲の声が甘くなる。
その頬が、ほんの一瞬僕の胸板に擦り付けられる。

「せっかくこんなに綺麗に焼けた、ふたりで作ったはじめてのピザなんだよ?
二つ折りに畳んじゃったら、もったいなくない?」

「確かにだ」

ゆえ、うやうやしくピザの1切れを捧げ持つ。

「稀咲。お誕生日おめでとう。──あーん」

「ふふっ、ありがとう。あーん」

(はむっ!!!!)

そうして稀咲の白皙が、幸せのバラ色に染め替えられる。

「んふふっ! おいひっ♪」


;おしまい

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